藤庭園緑化マガジン

環境に大きく左右される植物の病気や害虫の基礎知識。

2022/03/16 up!

植物の病虫害

世界で最も長生きしている木の樹齢をご存知でしょうか。
米国の国立森林公園内にあるマツ科の木の樹齢が推定4800年だそうです。
スギやヒノキなど高く伸びる木は長寿で、低木は比較的短命という説もあります。
常緑樹で低木のカキやモモ、クリは50年程度、ジンチョウゲは30年程度と言われています。
太く大きな木は幹の中の大半の細胞が死んでも一部の細胞があれば生命を維持できるということで、
脳や心臓の機能が失われると死につながる人間や動物とは異なるようです。
ただ、植物は動くことができないため健康に生き抜けるかどうかはその環境にかかっていると言えるでしょう。

さて今回は植物の悩みの種でもある「病虫害」についてお話しです。
日頃からこまめに植物の状態を観察しておくと、
病虫害を早めに発見できるため被害が広がるのを防止できます。

植物に健康で長生きしてもらうために少しでも手助けになればと思います。

植物の病気や害虫の基礎知識や対策

植物が病気になるとさまざまな症状が出てきます。
まずはお庭の植物をよく観察し、次のような症状がないかをチェックしてみてください。

・葉に白い粉がふいている

・黒や白や錆色に変色している

・幹にコブができている

・白いカビが新葉に付ている

・花弁に斑が入ったり腐敗している

・虫食いがある

・糞や卵がついている

お庭の植物をよく観察するのがオススメです。

<植物の病気の種類>

植物の病気には大きく分けて地上に現われるものと地中に発生するものがあります。
葉や花の表面や内部など地上で発生する病気には、うどんこ病や灰色かび病、黒星病、斑点病などがあります。
地中の根に被害を与える病気には立枯病、根腐病、あぶらな科野菜で発生する根こぶ病などがあります。

●黒星病●

●うどんこ病●(カビの菌によって葉っぱが白くなります。)

●白斑病●

 

〈植物の病気の原因〉

植物の病気は、糸状菌(カビ)や細菌、ウイルスなどの他、養分不足、日焼け、
大気汚染物質、害虫の寄生などが原因で発生します。
その中でも糸状菌(かび)が病気の原因になることが多く、
梅雨や秋の長雨の時期に起こりやすくなります。
雨の多い時期に雨水を通して被害が広がることが多いのが黒星病、べと病です。
晴れた日に胞子が飛んで伝搬するのがうどんこ病。
灰色かび病は低温でも発生しやすく秋の植物に被害が出ます。

<植物の病気の対策>

植物の病気を発見したら、まずは患部を取り除き被害が広がらないようにしましょう。
切った葉や茎などはビニールに入れてゴミとして捨てるか、焼却してください。
そして必要であれば薬剤を撒きます。
薬剤には、さまざまな種類があります。薬剤によってどのような病気に効果があるのかを確認してから使用してください。
多くの病気は湿気の多い環境で発生します。
茎や葉が密集する場所は剪定し枯れた落ち葉は掃除しましょう。
雨による泥はねがつくことを防ぐため、敷きわらなどで土の表面を覆うのも良いでしょう。

☆職人の目線☆【幹の樹皮を食い荒らす虫には要注意】

葉を食い荒らしたりする虫の被害は殺虫剤や忌避剤で対処が可能です。
ただ、葉などの病気を治す薬は1度や2度では効果が出ないので週1回ずつを4週間は続ける必要があります。
要注意なのが幹を食い荒らす虫。
例えばクビアカツヤカミキリは幹の中や回り周りを食い荒らすため気づきにくく
、サクラなどの木が枯れてしまう被害が日本各地で続出しています。
一匹のメスが1,000個以上産卵した例があるなど繁殖力が強く、幼虫が生きている木に寄生し中を食い荒らします。
被害が進行すると木は弱り、枯死してしまいます。
・幹の穴や根元に木くずや茶色い異物を見つけたら要注意。
大切な木を守るためには、日頃の観察が大切です。
例えばクビアカツヤカミキリの幼虫は食い荒らした木くずをフンとともに排出します。
幹の穴や根元に、かりんとう状の茶色い異物を見つけたら要注意。
食い荒らした木くずをそのまま根元に落とす虫もいるので見つけたら幼虫を退治し、
薬剤などでの対処を急いでください。

■植物につく害虫による被害

害虫には、葉などを食べる食害性害虫(毛虫、アオムシ、ナメクジ、コガネムシ、ダンゴムシなど)と、
葉や茎から養分を吸い取る吸汁害虫(アブラムシ、カメムシなど)がいます。
害虫の発生場所別に分類すると、葉・茎・花など地上の部分を食べるアブラムシ、アオムシ、コガネムシの成虫などと、
地下の根を食べるコガネムシの幼虫や目に見えないほど小さなセンチュウという害虫に分かれます。
また毛虫やムカデ、ハチ、蚊、アリ(ヒアリ)、クモ(セアカゴケグモ)などは、
人を刺したり咬んだりする危険性があります。
毒のある毛虫にふれると痛みやかゆみ、湿疹などの症状が出ることがあるので注意しましょう。

<人体に影響のある毛虫と発生する樹木、発生時期>

チャドクガ ツバキ、サザンカ、チャノキ 4~6月、8~9月
ヒメシロモンドウガ サクラ、ウメなどのバラ科 5~10月
クガ、キドクガ 多くの樹木の葉  4~9月
イラガ モミジ、カキ、クスなど 6~9月

 

■害虫を発見したときは

害虫を発見してもすぐに薬剤を使わずまずは環境に配慮した防除を心がけてみましょう。
ビニール袋と割り箸を持参し植物を観察して(特に葉の裏)、
害虫を発見したら割り箸でつまんで袋に入れ、虫がついた木や葉を剪定して一緒に捨てましょう。
葉についているカイガラムシは歯ブラシで落としてつぶします。
ナメクジはビールを注いだ容器を地面を少し掘って置くと捕獲できます。

・害虫には天敵がいる。
アブラムシはテントウムシ、
葉を食べるバッタはカナヘビやカマキリ、アシナガバチ、
クモは蚊などが天敵です。
こうした虫と共生することで薬剤に頼らない環境にやさしい庭づくりができます。

・薬剤を使う時の注意点

薬剤を使うときはラベルに記載された注意点を必ず守りましょう。
散布する場合は飛散しづらい薬剤を選び、
風のない日の午前中にお子さまやペットを室内に避難させ洗濯ものも取り込みます。
自動車などにかからないように注意しながら行います。
できれば、ご近所にも声をかけましょう。
風があれば薬剤がかからないように風上に立ち少しずつ後退しながら散布します。

●散布後は手足・顔などを石けんで洗いましょう●

 

害虫の発生を予防するには発生源をなくすことが近道

蚊などの発生を防ぐため、植木鉢の受け皿、バケツ、ジョウロにたまった水を捨てましょう。
こまめに落ち葉を掃除したり雑草を刈り取っておくことでも発生を減らすことができます。
蚊などは風を嫌うので、伸びた枝葉を剪定して風通しをよくしておくこともポイントです。

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